「卒塔婆(そとば)」は何のために立てるのか

前回の投稿からだいぶ時間が空いてしまい、ついに新しい年を迎えてしまいました。皆様、明けましておめでとうございます。

今回はお墓に立てる「卒塔婆」について解説します。

卒塔婆は「そとば」または、略して「とば」とも呼びます。語源となったサンスクリット語の「ストゥーパ」という言葉を音訳したため、元の発音に似ている「卒塔婆」という漢字になっています(言葉の意味ではなく、音を漢字に訳することを音訳といいます)。

「ストゥーパ」は「塔」という意味で、お釈迦様が入滅された(亡くなられた)後、ご遺骨を8つの国に持ち帰り、その徳を偲んでご遺骨を祀る塔を建てたのが由来とされています。

また、日本の寺院でも建立されるようになった三重塔や五重塔は、この「ストゥーパ」が起源とされています。そして後に、五重塔を模倣した五輪塔という石の塔が、お墓に建てられるようになりました。この五輪塔を簡略化したものが「卒塔婆」です。

卒塔婆は五輪塔のかたちがもとになっていますので、仏教の宇宙観である五大要素(下から順に「地(四角)」、「水(円)」、「火(三角)」、「風(半円)」、「空(宝珠形)」)が、その形状に表現されています。

私たちが暮らすこの宇宙は地・水・火・風・空の5つからなる要素で構成され、これらの要素は常に変化を続けていく(諸行無常である)ことを、卒塔婆の姿かたちは表しているのです。

一方で、時代は移り変わり、お釈迦様の時代から令和の今になっても「誰々のためにという想いで、塔を建てて亡き人を偲ぶ」ありようは今も昔も変わりがありません。きっと、この世の中には変わり続けていくことと、変わらないこと(真理)があるのだと思います。

近年のコロナ禍で葬儀や法要のあり方は変わってしまいましたが、それでも「誰々のために」という想いの進む先には、きっと明るい未来が開けていることと思います。